03.のように、刃のよう


 口角を上げて笑う。
 スザクの前で、仮面を割られ、素顔を曝す、彼。
 カレンの絶句する様子が背後から伝わる。知らなかったのか。正体を。そうか。
 最後まで君は。

 悦にいって君は言う。ブリタニアを壊す男、そして世界を手に入れる男だ。
 うっとりとした目付きで語る彼は既に尋常ではない。相対するスザクの背に鳥肌が立つ。
 花の様に毒蜜に溢れ、刃の様に鋭く研ぎ澄まされた美貌に一筋落ちる真紅の血は、まるで彼の顔を半分に割っているようにも見えた。
 お前にとって大切な物は何だったんだ。

 切り付けるように厳しい顔も、妹に向ける花が綻んだ瞬間の笑顔も、僕は知っている。
 なのに、無骨な黒の仮面は、彼の刃を欠けさせ、花弁を散らした。
 彼の素顔を闇に沈め、汚し、染めた。

 だから、僕は仮面を壊す。君を覆うそれを、打ち砕く。

 その為に。

 僕は右手に力を込めた。




―――それが、例え君を壊しても。


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20080205



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