02.星間距離 深夜、携帯電話のコール音が響いた。 「うるさいぞルルーシュ、部屋から出てとれ」 ルルーシュの隣で大人しく眠っていたC.C.がブランケットをルルーシュから奪い丸まった。暑いのが嫌だとクーラーの設定を18度にする位ならそのブランケットを俺に譲れ!とルルーシュは憤慨したが、これぞ夏の醍醐味だろう、とC.C.は相手にしなかった。 それはともかくとして。 誰だ? 時刻は23時50分、相手は非通知だ。騎士団の誰かか(玉城が酔っ払って掛けて来たのであれば即座に切る心積もりだ)それとも。僅かの確信を持って通話ボタンを押す。 『こんばんはルルーシュ、起きてた?』 「…寝ていた、が起きた」 『そっか、ごめん』 眉を下げる顔が簡単に描ける、申し訳なさそうなテナーが電話の向こうに居る。 「…どうしたんだ、こんな時間に。今日は出張なんだろう」 『つい今しがた終わった所なんだ』 「そうか、お疲れ」 『うん…ルルーシュに言われると癒されるなぁ』 「馬鹿が。…明後日には帰って来るんだろう?」 待っていてやるから。早く帰ってこい。 そんな思いを込めて告げた。 『上司次第だけど。』 「上司って、あのロイドとか言う…」 『そう、あの人にとっては宝の山なんだよ、ここは。っと、忘れてた、ルルーシュ、今どこにいるの?』 「クラブハウスだ」 『じゃあちょっと、テラスに出てみてよ』 「?」 もともとリビングに向かっていた足を少し伸ばしてテラスへ向けた。南に面した掃き出し窓を開き、外に出る。 七月もまだ一週目だと言うのに熱帯夜が続く。しかし外気は予想に反して幾分涼しく、大気を緩く攪拌し風を生んでいた。 『着いた?じゃあ、空を見上げて』 「ん…あぁ」 上を向くと、思わず声が出てしまう。 「そうか、今日は七夕か」 『そう、トウキョウでも見れてる?』 さっき外に出たときに気がついてさ。こんな時間なのに悪いかな、って思ったんだけど。どうしても… 申し訳なさそうな声にルルーシュは忍び笑った。 「いいさ、お前の誕生日には一緒に空を見よう。多分まだ、見れるだろうし」 『…うん』 「だから、ちゃんと帰ってこいよ。洪水なんて起こっていない筈だからな。 ―――織姫と彦星程、遠い所に居る訳じゃないんだ」 隔てるものは、何もない。 ちょうどその時、リビングの壁に架けられた時計が時を告げる。ルルーシュの言葉と、くぐもった返事は鐘に掻き消されてしまった。 そして、七月十日。 一緒に見上げた夜空からは、ぽつりぽつりと雨が落ち やがて雨は嵐になった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 20080205 ブラウザバックでお戻りください |