01.あなたのいない幸福を引き裂いて、―――そして私を引き裂いて 扉の向こうにいた、ナナリーを抱えた。軽い。 ふわふわと波打つ髪に触れるのは幼少の頃以来で、気をつけないと地面に擦ってしまう。 車椅子は、一先ず置いておく。 戻ると、既にカレンの姿は消えていた。 彼の亡骸と共に、あの朱い機体で戻ったのだろう。 床に溜まった赤黒い血液は既に渇いていた。横目に通りすぎ、跪く姿勢を保つ白い巨人を見上げた。掌にナナリーを載せ、先に自分が搭乗してランスロットを動かしナナリーを導く。 抱え上げ、膝の上へ。腕で抱えるには軽い身体は、確かな重みと熱を伴ってスザクに現実を教えた。 何とも言えない苦さと、痛みを。 既に午前の太陽は上り、西の空は青さを増している。 「…スザク、さん?」 沿岸地域まで半分、といったところでナナリーが目を覚ました。 「ナナリー、起きた?」 よかった、と続けるつもりだった言葉は喉に張り付いて言葉に出来なかった。 スミレ色の瞳が、焦点を定めて、スザクを見ていた。 「ナ、ナリー」 「スザクさん、」 お兄様は何処ですか。 ナナリーは、まるで夢見るようにうっとりと、スザクを見つめた。 その瞳に、一刻も早く兄の姿を映したいと、彼より僅かに淡いモーブが語っていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 20080202 ブラウザバックでお戻りください |