02. 誤算 人がいない教室はやけに広々としているように感じる。 時計は既に夜の8時を指している。まだ幾分、エリア11特有の、夏の残暑が残っているようだとは言え流石に外は暗く、些かの閉塞感は否めない。普段であれば窓際の席と言う好条件を利用して、騎士団活動に削り取られている睡眠時間にあてるのだが、受講生がニ名という状況では流石にそれは憚られた。 仮に腹を立てた教師が難問を吹っかけて来たとしても、答えられる自信がルルーシュにはあった。だ、それで矛先が、相方…スザクにいってしまえば元も子もない。 戦争によって基本の義務教育を満足に受ける事が出来なかったスザクには、アッシュフォードの教育準は些かハードルが高かったらしい(それでなくとも言語の壁があるのだ、理解スピードが劣るのは仕方がないと言えよう) だがスザクの場合、難しい問題も、時間は多少かかるが言葉を理解し理屈が飲み込めれば難無く習得出来てしまうだけの能力がある。だから教師も見捨てられないのだろう――生徒会室でノートを傍らに勉強会をしてしまう自分も人の事は言えないが。 しかし今ここでの問題は。 スザクはわかる。スザクは職業軍人でもあることだし、普段の出席日数が足りていないのは誰の目にも明々白々だ。軍人でもあり、軍務と学業を両立しているスザクに補講を受けさせる態度は、他の一般生徒と別け隔てしない一点に置いて評価もしよう。 だが。 (まさか俺まで、な…) 仕方がない。 騎士団員の無用な詮索を受けずにいるには、休日平日を問わず顔を出さねばならないし、課題を持ち込むわけにもいかないから、結局日常生活に支障が出るのだ。 先程スザクが教室に遅れて入室した時、スザクはとても驚いていたようだった。 補講を受けるのは自分一人だと思っていたらしい。この場にルルーシュが居る事に疑問を感じているはずだ。 ルルーシュは出生を隠しているとは言え学校では一般の生徒だ。頭はいいし、住居は校内でもあるし、普段なかなか学校に来ないスザクはルルーシュもまた欠席が多いことを知らなかったのだ。 補講が終わるまであと15分。それまでに欠席の多い理由を考えておかねばならないだろう。 ルルーシュはため息をこっそり殺した。 ―――――――――――――― 20070507 ブラウザバックでお戻りください |