01、振り返らない背中



 久し振りのゆっくりした時間だった。咲世子さんの作ってくれたアップルパイはシナモンが効いていて美味しくて、先日買い求めた紅茶は逸品だった。その値段に相応しい芳香を放っている。そして、傍らには優しくて可愛い妹と、彼女と談笑する奇跡の再会を遂げた親友。
 久し振りのオフだ。心安まる時間に充溢した気持ちで本の頁をめくる。
 同時に一つの決意を固めた。次に二人で会ったときには告げようと思う。心優しい親友は否とは言わないだろう。少々渋ることはあるかもしれないが。俺の生きる意味を、こいつにくれてやる。ちょっとは真面目に生きる気持ちになれば良いと思う。
 そんな昼下がり。

 現れた軍人女性と友に親友が軍に゛戻って゛行く。
 久方ぶりに感じる僅かの失望?あるいは淋しさ、か。ばかな。

 馴れ合いたいわけではないのだ。
 仲間になれと言った時だって、それはつまり、スザクを守りたかったからだ。
 守りたい者の命が、滅ぼしたいものの前で消えかけていた。
 だから。
 だから。





 こんな、前も見えなくなりそうな失望なんて、嘘なんだ。

 姿が見えなくなるだけで、本当にそこにいたかどうか不安になるなんて、そんな弱さ。



 許されない
(でも不安なんだ)


 引き返すことは出来ない
(不安…)



 とうに定めた、修羅の道を歩むと
(一つでいい、肯定されたい)





―――全ては、あの時向けられた、お前の背中が語っていたというのに。



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20070507

17話捏造。
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