未熟な愛で私をして。


 朝の光がカーテンをすかして入り込み、部屋の中をぼんやりと照らす。傍らに息づく高い体温を感じてルルーシュは鼓動を早めた。
 昨夜散々汚した筈の体は清められていた。思わずお約束な奴だなと呟く。昨夜、手慣れた様子で口付けるスザクに、男女とも経験があるのかお約束な奴だな、と揶喩すると、これからはルルーシュだけだからと真面目な顔をしてスザクは言った。否定されなかった前半に僅か衝撃を感じたが、すぐにそれも解らない程に溺れさせられいつの間にか気を失っていた様だ。
 いつもの習慣で入室するなりサイドテーブルに放った携帯電話は、幸い緊急連絡もなく一晩沈黙を貫いたらしい。時計を確認して、休日時程であと三時間は寝られる事を確認し、シーツの波間に潜り込む。
 傍らの体温に現実を認識して、頬に血を上らせながらもじんわりとした幸福感に襲われた。もぞもぞと安定する場所を探しているとスザクが声を漏らしたのでルルーシュははっとして、小さくスザク、と呼んだ。その声に滲むどうしようもないけだるさと甘さに、死にたい程の羞恥を味わう。だが幼い寝顔に素直な愛おしさを感じ、もう一度溢れる心のまま名前を呼ぼうと小さく息を吸い込み




「――ィ、」

「―――……、っ」


 そのまま、飲み込んだ。


 手足は凍り付いたように冷たいのに、体の中心は胸の奥から込み上げる熱い塊に妬かれるようで。
「…こんな時までお約束じゃなくて良いんだぞ?」
 震える声で漏らした。安らかな寝顔で眠るスザクを殺してやりたいのか泣きたいのか、それとも二度と会わないとこの場から姿を消すべきか、ルルーシュは悩んだ。だが悩むそばから昨夜のスザクの約束を思い出し、仕方ない奴だなと許してしまいそうになる。





 結局ルルーシュはもう一度ベッドに戻った。だが先程までルルーシュを抱えていた腕には戻らず、スザクに触れないよう、凍えた手足を温めるように小さく膝を抱えた。
 つ、と熱いものが一筋目尻を流れ落ち、冷たいシーツに吸い込まれて消えた。









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200710某日

ありがち。



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