ギアス的『うらしまたろう』


 昔々あるところに、気高く美しい亀がいましたが、いかんせんかわいらしい亀でしたので近所の悪ガキどものいじめの的となっておりました。そこに正義感と倫理感の塊のような、天然パーマの浦島太郎がやってきて、亀を悪ガキどもから救い出しました。
「このブリキ野郎が!」
「やめてください仲間同士で!」
『いや仲間じゃないから!』

「助けてくれて感謝する。御礼にブリタニア宮に案内しよう、妹にたちに会わせたい」
 妹よりもこの美しい亀ともっと一緒にいたいと思った天パの浦島太郎は、そのブリタニア宮というところに連れられて歓待を受けました。

 亀に連れられてブリタニア宮にやってきた浦島太郎は、妹であるという盲目のブリタニアの末の皇女と、ピンクのくるくるの第二皇女に会いました。「お兄様を助けてくださってありがとうございます」
「お兄様?」
「はい、お兄様は本来ブリタニア帝国第三皇子なのですが、我が一族はくせっ毛でないと皇族と認められないのです。ですから、お兄様は皇帝陛下に亀にされてしまったのです。」
 亀には、二人の兄と一人の姉、二人の妹がいる様でした。妹二人に歓待を受けているとき、急にブリタニア皇帝の使者がやってきて、浦島太郎を皇帝陛下の前へ引っ立てて行きました。

「お主、亀を助けたそうだな。お主に末の姫を娶らせてやろう」
 皇帝陛下は見事なロール髪をゆさゆささせて重々しくいいました。しかし、妹姫よりも亀の方が好みだった浦島太郎は、妹の代わりに亀が欲しいと正直に言いました。が、
「ならん!あやつは一番あやつらの母親に似ておるのだ!どうしても欲しいと言うのなら、あやつのきょうだいを納得させるのだ!」
 言われた浦島太郎は、妹達の元へ戻るとかくかくしかじか、事情を話しました。
 妹姫達は、愛されるが故に冷遇される兄皇子に胸を痛めておりましたのですぐに賛成し、亀自身の望みを聞く事なく話は進みます。
 
 第一皇女は紅の猛将という異名を取るほどの武人でしたが、浦島太郎もまるで人では無いかのような運動神経の持ち主でしたので、死闘の末、勝利をもぎ取ることが出来ました。「ナンバーズを区分するのはブリタニアの国是だ!」


 第二皇子は芸術に優れた皇子ではありましたが近頃はチェスに嵌まっているということでした。と言うのは何戦しても七つ年下の亀に勝つことが出来ないかららしいのですが、それは亀が人並み外れた強さを有しているからだと第二皇子は公言して憚りません。しかし、将棋ならともかく初心者である浦島太郎にまで負けてしまったというのはどうなのでしょうか。亀が強いのか第二皇子が弱くていらっしゃ、おっと失礼、もしくは浦島太郎に才能があったのでしょうか…「次は歌でも歌うか?」


 何はともあれ第二皇子を攻略し、残る敵は最凶の魔性と謳われる第一皇子のみです。浦島太郎は緊張に強張る体を叱咤して、事情を話しました。しかし、事情説明の途中、扉がバッターン!と景気良く開かれ、やけに色素の薄い眼鏡が入ってきました。
「でーんか!!ぜひその子をわれわれ特派に」
 浦島太郎は訳がわからないまま連れていかれ、おかしな人型自在装甲機の背中に詰め込まれました。しばらくして藍色の髪の優しそうな女性に外に出してもらうと、先ほどの眼鏡が叫んでいました。「通常稼働率94パーセントォ!」

 
 一番困難だと思われていた第一皇子ですが、なんと書類にサインと血判をするだけですみました。良かったですね。「ええ。何をさせられるのかさっぱりわからない所が怖いんですけど」大丈夫、死んだりはしませんから。
「すばらしい案だよ」


 そんなこんなで全てのきょうだいに認められた天パの浦島太郎はもう一度皇帝陛下に亀が欲しいと上奏しました。
「そんなにあやつが欲しいというのか。ならば当然あやつの同意を受けておろうな?」

「あ」



 その頃亀は、海の底に住む灰色の魔女の元を訪れていました。
「どうした亀よ」
「いつもの縮毛矯正を頼む」
「そんなに心配せずとも、お前の髪質は曲がることを知らない愚直なほどのストレートだぞ。」
「気が気じゃないんだ、いつあの皇帝のように巻始めるかと思うと」
「お前の最愛の妹達も巻いてるだろうが」
「それはそれ、これはこれなんだ!あぁ、でもこの間助けてくれた浦島太郎とか言う人間もくるくるだったな」
「なんだ、そいつは平気なのか」
「あぁ。できれば妹の騎士に欲しいところなんだが…」

 浦島太郎の報われる日は遠い?

070515

20080802〜20080923まで拍手に掲載。
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