V
「ルルーシュ!ドレスよ!舞踏会の支度をなさい!」
「…俺、男ですよ」
「当たり前よ!じゃなくて、私達のドレス!」
「何なんですか、藪から棒に。ドレスなら、この前新調したばかりでしょう……」
「今度の舞踏会は別よ!今度の舞踏会はね!なんと」
王宮主催なんだから!
帰って来たと同時に叫ぶ義母を、シャーリーとカレンは離れて見守っていました。どうしてこの母からこの娘が生まれたのでしょう…
「今度の舞踏会はね!なんと皇子様の婚約者選びの舞踏会らしいの!国中の女の子が集められるのよ!」
「なんだ。じゃあ着飾らせるのはシャーリーとカレンだけで十分じゃないですか」
「つべこべ言わない!新しいドレスを三着。急ぎでお願いね!」
いつものことながら強硬な義母です。
ルルーシュはどんなドレスにしようかと頭で考えながら、家事に戻りました。
一方その頃、王宮では。
渦中の皇子様、シュナイゼル・エル・ブリタニアと、その従僕兼唯一の友人でもあるロイド・アスプルンドが皇子の部屋で話しているところでした。
「どうしちゃったんですーシュナイゼル殿下。この歳になって婚約者決めの舞踏会だなんて。ついにお父様の勘忍袋がお切れになったんですかぁ?」
「違うよロイド」
執務机にしな垂れかかるロイドをそのままにシュナイゼルは立ち上がりました。
「違うとは一体?」
「今度の舞踏会は、私が父上にお願いしたんだ」
「…ついにご自分の欠陥にお気づきになられたんなら良いことですけどぉ?」
シュナイゼルは窓際に立つと、眼下に広がる城下町を見据えます。
「ロイド、知っていたかい?マリアンヌ叔母様に、娘が居たことを」
「マリアンヌ様?王妹殿下は二十年前に行方不明になったはずではー?」
「実は先日、私の占い師が予言をしてね。私の従姉妹の存在を」
「…あぁ!V.V.様ですね!貴方はマリアンヌ様にぞっこんでいらした…欲しくなっちゃったんですかぁ?」
「あぁ」
シュナイゼルは察しの良いロイドが好きでした。
「私の婚約者決めとは父上を出し抜き欺くための嘘。我が従姉妹殿を探し出すことこそが真の目的、と言うわけさ」
「美貌で名高かったマリアンヌ様のお子なら、容貌も期待できる、とか考えちゃってるんですよねー」
けらけらとロイドが笑います。シュナイゼルはそれに薄い笑みを返しました。
「聡い君は、嫌いではないよ」
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200706XX
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