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皇子はマリアンヌの遺児を探しておりました。マリアンヌとは皇子の父である王の妹、つまり皇子の伯母に当たる人です。
彼女が何故突然姿を消したのか、皇子はその理由を知りませんでした。ただその人がとても美しかった事、そして幼い皇子に沢山の愛情を注いでくれた事、優しい思い出の結実のような人であった事は確かでした。皇子は、彼女を探し続けました。
掴んだ真実は、伯母は駆け落ちをした、と言うものでした。相手は定かではありません。ただ、当時隣国への嫁入りが決定しかかっていた状況を思えば、頷けないこともありません。マリアンヌが行方知れずになった際、悪化しかけた国交をもとの鞘に納めることが出来たのは皇帝の力量に依るところが多かったのですが、その際マリアンヌは不慮の事故で死亡したと偽ってしまったのです。ですから今更マリアンヌが現れても、皇帝にとっては甚だ都合が悪いのです。
けれど真実を知らされたこの時、皇子にもう一つの希望が残されました。
情報が齎された時、マリアンヌは既に墓地に記録が残るのみとなっていましたが、彼女には遺児がいることが判明したのです。
葬儀を見ていた人間が、確かに泣いている小さな少女を見た、と証言した事から、シュナイゼルはこの従姉妹に当たる少女に会いたくて堪らなくなってしまいました。そこで考えついたのが、自らの婚約者を選ぶ舞踏会にその少女を招待することです。皇子は、まだ見ぬ従姉妹に、伯母に向けた思慕と同等、否、同等以上の想いを持つようになってしまったのでした。
勿論本人に会った事はないのですから、皇子はマリアンヌの面影を宿すであろう少女に恋をした事になります。
しかし、基本的に他人は駒か、あるいは他人という認識しかしていない皇子にとって、伯母の娘への感情は破格のものだと言えます。
しかしC.C.の機転によって公の元、ルルーシュが少年であると偽証させてしまった今、ごり押しすることはシュナイゼル皇子にはもはや出来ません。
「ふふ、失恋、かな」
ロイドは馬車に戻ると、小窓から様子を伺っていた皇子に面白そうに言いました。
「いやはや、流石にマリアンヌ様のお子さんですねぇ。いろんなものを味方に付けていらっしゃる」
「だろう?あぁ…やはり勿体ないな。妻でなくとも構わないから、いずれ奪いに来るとしようか」
ルルーシュが本当は少女であることを知るシュナイゼルにとって、この言葉は単なる戯れに過ぎませんでしたが、ロイドは残念でしたねぇ、としみじみ呟きました。観察対象として、ルルーシュはロイドに酷く気に入られてしまったようでした。
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200706XX
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