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階下に降りたスザクは、まず台所に向かいました。
そこでは、ルルーシュの義母と義妹が竃に掛けた鍋を覗き込んでいました。熱く熱した鍋に、何故か小麦粉の袋を傾けようとしています。
「わーーー!待ってください!」
「え?」
ミレイの手から小麦粉の袋を奪取し、すんでの所で粉塵爆発を防いだスザクでしたが、今度は彼女達の不審な目を向けられます。
「どちらさま?」
「僕は、えっとその、ルルーシュの友達です。カルデモンド家で働かせて頂いていて。ルルーシュが倒れたと聞いて、何かお手伝い出来ないかと思いまして」
「あら、そうなの」
罰が悪そうにミレイが眉尻を下げました。
「料理は僕がするので、奥様方はどうぞあちらでおくつろぎになっていてください」
スザクは二度目の人間化にして自分の容姿をほぼ正確に把握していました。
にっこりと微笑むと、ミレイは信用したのでしょう、お願いね、と言い置いて、娘二人を連れ台所を出ていきました。
さて、ここからが問題です。
三日前、初めて人間になったスザクに、果たして料理が出来るのでしょうか…。
果たして、料理は出来上がりました。ルルーシュが料理する姿を、いつも見つめていたからでしょうか。初めて手にする包丁や食器、鍋を操るのが楽しくて仕方ありません。
味は、たまにルルーシュが餌としてお裾分けしてくれた食べ物の味を覚えていましたので、なるべくそれに似せて作ったつもりです。
火力が分からず、僅かに焦がしてしまったシチューはそれでもミレイ達には合格だったようです。
スザクは水差しやグラスや、水の入った盥を屋根裏に運び、ルルーシュがいつもする通り、洗濯物を取り込んで畳みました。初めてですので、僅かなヨレや皺は許していただきたい所です。
日が暮れて、夕飯の準備をする前に一度ルルーシュの様子を見に行きました。跳ね戸を開けると、ちょうどこちらを眺めていたらしいルルーシュと目が合いました。
「お前…」
掠れた声でルルーシュが喋ろうとするので、スザクは慌てて水差しから水を注ぎ、ルルーシュを座らせてコップを握らせました。
「ゆっくり飲んで」
すべてを飲み干すと、今度こそルルーシュが口を開きます。
「お前は一体誰なんだ」
「僕は…僕は、魔女の使い魔、だよ」
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200706XX
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