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昔々、ある所に、父に先立たれた可哀相な息子が、継母や姉妹達に虐められていました!
「ちょっとルルちゃん!?まだ埃が残ってるわよ!ホラホラホラ!」
「そんなに言われなくても、一度で十分聞こえてますよ、ミレイ義母さん」
「まぁ!生意気な子!私は貴方をそんな風に育てた覚えはないわ!」
「俺だって貴女に育てられた覚えはありません」
「ガアッツ!」
「うわ!びっくりした」
「シャーリー!カレン!行くわよ!今日のお茶会はカルデモンド卿主催なんだから、気張りなさい!」
「はーい」
返事をしながら義妹達が下りてきました。
「お義兄様、また怒られてたの?」
「あぁ。まぁ、もう慣れたさ。あ、リヴァルによろしくな」
「うん、わかったわ」
ルルーシュは母を生まれてすぐに亡くし、優しい父と二人暮しをしていたのですが、その父も先年亡くなってしまいました。その更に一年前に父と再婚していたミレイが父の死後、遺産を全て継いだのですが、それと時を同じくして、それまでは僅かな人数の家人とこなしていた家事一切をルルーシュ一人に押し付け、家人を全て解雇してしまったのです。
(リヴァルの家なら、夜まであずかってくれるだろ。夕飯は俺の分だけで良いな…)
すべての居室掃除が終わり、ミレイに注意された窓枠の桟を拭き終えると、流石のルルーシュもくたくたです。幸い、まだ日の落ちる前の時間でしたので、ルルーシュは一度、自室の屋根裏部屋に戻って仮眠をとろうと思いました。
ルルーシュとて、この家の一人息子です。
父が亡くなる前には、自分の部屋を家の中に持っていました。が、それも父を亡くした時に、義母に取り上げられてしまいました。
今では、屋根裏部屋の暖炉の灰…の上に藁を敷き、シーツを被せたベッドだけがルルーシュの安住の地でした。
ルルーシュが屋根裏の撥ね戸をあけると、自分のベッドの上に、茶色くふわふわしたものが転がっているのが見えました。
「こらスザク、お前はまた…」
茶色の塊を摘み上げたルルーシュはしかし、余りの疲労にそれを離す間もないままベッドに転びました。咄嗟に塊を持っていない手で受け身をとり、転がると、何とかベッドに横たわる形で転倒を免れます。
ルルーシュは安堵のため息を吐くと、右手の塊に向かって独り言を放ちました。
答えが返る筈がないので、好きな事が言えます。
「全く、何でミレイ義母さんは俺を目の敵にするんだ…」
しかし眠気には勝てず、ルルーシュは30分だけ、と呻きながら眠りにつきました。
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200706XX
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